はじめに:昨日まで笑っていたわが子が、また動けなくなってしまった朝に
「最近は自分から話しかけてくれて、笑顔も増えていたのに……」
「今朝になって急に『やっぱり無理』と布団をかぶってしまった」
不登校のお子さんを支える中で、親御さんの心が最も激しく折れてしまう瞬間。
それは、不登校が始まった最初の日ではなく、「良くなりかけていたのに、突然逆戻りした日」ではないでしょうか。
「私の期待が重すぎたんだろうか」
「またあの暗闇に逆戻りしてしまうの?」
少しだけ見えかけていた希望の光が、サーッと引いていくような絶望感。
ため息を飲み込みながら、一人で台所に立ち尽くしていませんか?
しるべ私の知人も、お子さんが自分から『来週から別室登校してみる』と言った数日後、当日の朝に過呼吸のようになって動けなくなり、親子で大泣きした経験があります。でも、知っておいてほしいのです。この逆戻りは、決して『悪化』ではないんですよ。
この記事では、不登校の回復期に必ずと言っていいほど訪れる「逆戻りの正体」と、親御さんが焦らずにお子さんの心の波を受け止めるためのヒントをお伝えします。
なぜ回復期に「逆戻り」が起きるのか?
お子さんが再び布団に潜り込んでしまったのは、後退したからではありません。
むしろ、心が前に進もうとしたからこそ起きる「自然な反応」です。
- ① 「外の世界」を意識したからこその恐怖
-
回復期に入り、少し心のエネルギーが溜まってくると、お子さんは「学校」や「将来」のことをリアルに考え始めます。
考えられるようになったからこそ、過去のトラウマや失敗への恐怖が一気に蘇り、ブレーキがかかってしまうのです。 - ② エネルギーの「使いすぎ」による一時的なガス欠
-
笑顔が増えたり、会話ができるようになったりした状態は、大人で言えば「病み上がりに少し散歩ができた」程度のリハビリ段階です。
本人が思っている以上にエネルギーを消費しているため、バッテリーが急激に切れて動けなくなります。 - ③ 「三歩進んで二歩下がる」のが回復の法則
-
人間の心は、一直線には回復しません。
前進と後退を繰り返す波を描きながら、少しずつ、少しずつ底上げされていくものです。



臨床心理の現場でも、『回復期の急なブレーキは、心が正常に防衛本能を働かせている証拠』と説明されます。無理をして本当に壊れてしまう前に、自分で自分を守るために休めている状態なんですよ。
お子さんが発している本来の回復のサインについては、こちらの記事でも詳しく整理しています。




逆戻りしたとき、親が「絶対にやってはいけない」こと
お子さんが再び動けなくなった朝、親御さんの動揺はお子さんにそのまま伝わります。
以下の対応だけは、ぐっと堪えて避けてあげてください。
- ・「どうして?」「行くって言ったじゃない」と問い詰める
-
一番ショックを受け、自分を責めているのはお子さん本人です。理由を聞かれても言葉にできず、さらに苦しんでしまいます。
- ・深いため息や、あからさまな落胆の表情を見せる
-
親の落胆を見た瞬間、お子さんは「お父さんやお母さんをまた裏切ってしまった」と強い罪悪感を抱きます。
- ・初期の頃の対応に戻すことを恐れる
-
「甘やかしたら癖になる」と焦る必要はありません。今はまた、エネルギーを補充する時間に立ち戻るだけです。


親ができる具体的な3つの寄り添い方
逆戻りした日の朝を、親子で乗り切るためのステップです。
「行けなくてごめんなさい」と泣くお子さんには、
「無理しないで教えてくれてありがとう」「しっかり休もうね」
と伝えてあげてください。自分の体調に合わせてブレーキを踏めたことを認めてあげることが大切です。
一度動き出しかけたからといって、「明日こそは」と期待を握りしめ続けるのはやめましょう。
「また元気になったら考えればいいや」と、家庭内の空気をもう一度リラックスモードに戻してください。
心が揺れ動く時期は、自律神経や体調も大きく乱れます。
食事を無理に食べさせようとするよりも、手軽に栄養を補給できるサポートを用意し、身体の土台を整えてあげることに徹しましょう。


【しるべの視点】逆戻りは、次のジャンプのための「助走」
リサーチを重ねる中で出会った多くの経験者の方々が、口を揃えてこう言います。



『あの時、急に動けなくなって立ち止まった時間があったからこそ、本当に自分の納得する進路を選べた』と。逆戻りは後退ではなく、心が大きく深呼吸をして、次の跳躍に備えるための大切なタメの時間なんですよ。
親御さん自身が絶望の底に引きずり込まれそうになったら、まずはご自身の心を休めることを何より優先してくださいね。




おわりに:わが子の「心の時計」は、ちゃんと進んでいます
一度動き出そうとした事実は、消えたりしません。
お子さんの心の中に、「前を向きたい」というエネルギーが確実に生まれている証拠です。
今は、その芽が風に折れないよう、家庭という温室でそっと風よけになってあげてください。
心の揺らぎを身体の底から支える。家族の笑顔を守る栄養のお守り。
焦らず、わが子のペースで。自宅からプレッシャーなく始められる無学年式の学び。
少し休めば、お子さんはまた自分の足で立ち上がります。
リサーチャーしるべも、あなたがその心の波に飲み込まれることなく、穏やかな笑顔でお子さんを見守り続けられるよう、ずっと隣で応援しています。大丈夫、一歩進んで二歩下がっても、道はちゃんと前に続いていますよ。









